結論:加入してよかった。ただし、窓口に行く前に自分で調べること
農業の収入保険に加入しました。
結論から言うと、加入してよかったと思っています。りんご農家をやっていると収入が読めません。「最悪の年でもここまでは戻る」という線が引けたことで、経営の判断が落ち着きました。
ただ、手続きは思っていたより自分で調べる必要がありました。ここが今回いちばん伝えたいところです。
制度そのものより、手続きで戸惑ったことを中心に書きます。
農家の実感
「窓口に行けば全部教えてもらえる」と思って行くと、たぶん詰まります。逆に、自分で調べて具体的に質問を用意していけば、話は早いです。
収入保険とはどういうものか(簡単に)
詳しくは別の記事に書いたので、ここでは要点だけ。
- 補償の対象は、品目を問わず農産物の販売収入全体
- 自然災害だけでなく、価格低下・盗難・病気なども対象
- 基準収入の9割を下回った場合に、下回った額の9割を補てん
- 基準収入は過去5年の平均収入と見込収入の、いずれか小さい額
→ 制度の位置づけについては 農家のNISAとiDeCo、どちらを先にするか にも書いています。
加入の条件:青色申告が必要。でも1年分でも入れます
収入保険は、青色申告をしている農業者でないと加入できません。
ここで「5年分の実績がないと無理だろう」とあきらめる方がいますが、そんなことはありません。青色申告の実績年数に応じて、選べる補償限度が変わるだけです。
| 青色申告の実績 | 補償限度の上限 |
|---|---|
| 1年 | 75% |
| 2年 | 80% |
| 3年 | 85% |
| 4年 | 88% |
| 5年 | 90%(最大) |
1年分でも入れます。補償が少し小さくなるだけです。
ここだけ押さえてください
「実績が足りないから無理」ではありません。まず青色申告を始めることが、そのまま加入資格になります。
青色申告のやり方は 農家の確定申告のやり方 に書きました。帳簿づけは マネーフォワードで農業の帳簿をつける が参考になると思います。
手続きの流れ
申し込み先はNOSAI(農業共済組合)です
窓口はお住まいの地域の農業共済組合(NOSAI)です。JAではありません。ここを間違えると二度手間になります。
期限に注意:個人は前年のうちに申請
個人の場合、保険期間は1月〜12月の暦年です。税金の計算期間と同じです。
そして申請は、保険期間が始まる前の月まで。つまり前年の12月までに手続きを終える必要があります。
農家の実感
ここが落とし穴だと思います。「来年から入ろう」と思ったら、その年のうちに動かないと間に合いません。収穫と重なる時期なので、早めに動いた方がいいです。
実際の流れは、電話一本から始まりました
私の場合はこうでした。
- NOSAIに電話して、加入したいと伝える
- 必要書類を送ってもらう
- 所定の様式に記入して提出
いきなり窓口へ行く必要はありませんでした。まず電話で「加入を考えている」と伝えれば、書類が送られてきます。
用意した書類
- 所定の申請様式(送られてくるもの)
- 青色申告のコピー
- 戸籍上の相続人だと分かる書類
3つめは、人によります。私は父から園地を引き継いだため、相続人であることを示す書類が必要でした。
親から経営を引き継いだ方は、この書類を求められる可能性があると思っておいた方がいいです。戸籍関係の書類は取り寄せに時間がかかるので、早めに動いた方が安心です。
なぜ必要なのかは私も確認しきれていないのですが、親の営農実績と結びつける手続きなのだろうと理解しています。気になる方はNOSAIに直接確認してください。
ここだけ押さえてください
まずは電話一本でいい。「入りたいのですが」と伝えれば書類が届きます。
ただし親から引き継いだ方は、戸籍関係の書類を求められることがあります。ここで時間を取られると期限に間に合わなくなるので、早めに動いてください。
正直に書きます:窓口で戸惑ったこと
ここは正直に書きます。説明を聞いても、その場ではよく分からない部分がありました。
誤解のないように書いておくと、これは特定の誰かの問題ではないと思っています。収入保険は制度として新しく、しかも複雑です。補償限度、支払率、積立方式の有無、保険料率の危険段階……組み合わせが多く、口頭で一度聞いて理解できるものではありません。
大事なのは、それを前提にこちらが準備していくことでした。
行く前に調べておくとよかったこと
私が「先に知っておけばよかった」と思ったのはこの4つです。
- 自分の過去5年の農業収入(青色申告決算書を見れば分かります)
- 保険方式だけにするか、積立方式も付けるか
- 補償限度を何%にするか
- 保険料と積立金、事務費がそれぞれいくらになるか
窓口で聞くとよい質問
漠然と「どうすればいいですか」と聞くと、話が進みません。具体的に聞いた方が早いです。
- 私の場合、基準収入はいくらになりますか
- 保険料はいくら、積立金はいくら、事務費はいくらですか(分けて教えてください)
- 積立方式を付けた場合と付けない場合で、負担と補償はどう変わりますか
- 補償限度を1段階下げると、保険料はいくら安くなりますか
- 私の青色申告の実績は何年分として扱われますか
紙に書いて持っていくのがおすすめです。
ここだけ押さえてください
窓口は「教えてもらう場所」ではなく「自分の数字を確定させる場所」だと考えた方がうまくいきます。制度の理解は、行く前にネットで済ませておく。これだけで手続きの負担がまるで変わります。
保険料はいくらかかるのか
ここが一番知りたいところだと思います。負担は3つに分かれています。
1. 保険料(掛け捨て)
国の補助が50%入ります。まずここで半分になります。
保険料率は危険段階別で、保険金の受取実績に応じて毎年変わります。新規加入は基準の区分から始まり、3年ごとに改定されます。1年で大きく変動しないよう、上下の幅にも制限があります。
そして、ここに自治体の助成が上乗せされることがあります。これは後で詳しく書きます。私の負担額が小さいのは、この助成があるためです。
2. 積立金(自分のお金)
積立金には75%の国庫補助が入ります。
これは掛け捨てではありません。補てんに使われなければ、翌年に繰り越されます。実質的には「補助付きの自己積立」に近い性格です。
3. 付加保険料(事務費)
これが運営にかかる費用です。金額は公表されています。
加入者割:新規 4,500円/継続 3,200円
+ 補償金額割:補償金額1万円あたり 18〜22円
そしてこの事務費にも、50%以内の国庫補助があります。
さらに、インターネット申請や自動継続特約を使うと事務費が割引されます。継続の手間を減らせて安くなるので、使わない手はないと思います。
私の場合、いくらだったか
具体的な金額を書きます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 基準収入 | 約200万円 |
| 保険料(掛け捨て) | 約12,000円 |
| 積立金(自分のお金) | 約45,000円 |
| 事務費 | 約6,000円 |
そして書類にはこう書かれていました。
農産物の販売金額が約180万円を下回ると、保険金等の支払い対象となります
基準収入の9割です。ここを下回った分の9割が補てんされます。
この保険料の額は、そのまま参考にしないでください
後で書きますが、私の住む市には独自の助成があります。上の約12,000円は、その助成が反映された後の金額です。助成のない地域では、この倍近くになる可能性があります。
この数字をどう見るか
ここが大事なところです。3つを同じものとして見ないでください。
掛け捨てになるのは、保険料と事務費だけです。合わせて年間およそ18,000円。
積立金の約45,000円は、自分のお金です。補てんに使われなければ翌年に繰り越されます。出ていったきりにはなりません。
つまり実質的な負担は、年間2万円弱ということになります。
積立金は、国の上乗せで約4倍になります
もう一つ気づいたことがあります。
積立金は、農業者の負担が25%と決まっています。残りの75%は国庫補助です。
ということは、私が45,000円を出すと、国が約134,000円を上乗せして、積立の総額は約178,000円になっている計算です。
自分が出した額の、およそ4倍が備えとして積まれる。しかも使わなければ翌年へ繰り越されます。
農家の実感
私はここを理解するのに時間がかかりました。
「45,000円払った」ではなく「45,000円出して18万円の備えを作った」という話でした。数字を分けて見るまで、負担が大きいとしか思っていませんでした。
補償の上限はいくらか
基準収入200万円、補償限度9割、支払率9割で計算すると、最大でおよそ160万円が補てんの上限になります。
年間2万円弱の掛け捨てで、160万円の備え。私はこれなら入る価値があると判断しました。
見落とさないでください:自治体が上乗せ助成をしていることがあります
ここはこの記事でいちばん見落とされやすく、いちばん金額に効く部分です。
収入保険には国の補助があります。それとは別に、市町村が独自の助成をしている場合があります。
私の住んでいる市では、こうなっていました。
対象経費:農業経営収入保険の保険料のうち「掛捨て部分」
補助率:2分の1
つまり、国の補助で半分になった保険料が、さらに市の助成で半分になっているわけです。
先に書いた保険料 約12,000円は、この助成が反映された後の金額です。助成がなければ、倍近くになっていた計算になります。
必ず自分の市町村に確認してください
これは全国一律の制度ではありません。自治体ごとに、やっているところもあれば、やっていないところもあります。補助率も、対象範囲も違います。
そして、役所の側から「助成がありますよ」と教えてくれるとは限りません。
- 市町村の農林課・農政課に問い合わせる
- 市町村のサイトで「収入保険 補助」「収入保険 助成」で検索する
- NOSAIの担当者に「この地域に上乗せ助成はありますか」と聞く
農家の実感
同じ制度に入っても、住んでいる場所で負担額が変わります。ネットで見た誰かの保険料をそのまま自分に当てはめても意味がありません。自分の市町村に助成があるかどうか。ここを調べるだけで、負担が半分になることがあります。
ここだけ押さえてください
収入保険の負担は「国の補助 → 自治体の助成 → 自己負担」という順に軽くなっていきます。自治体の助成があるかどうかを確認しないまま「高い」と判断するのは、もったいないです。
事務費について、思ったこと
手続きの最中、正直なところ「この負担は何に使われているのか」と思う瞬間がありました。
ただ、調べてみて見方が変わりました。
事務費は保険料とは完全に別建てで、金額も計算式も公表されています。加入者割がいくら、補償金額割がいくら、と決まっている。そして、そこにも国庫補助が入っています。
つまり、運営費は加入者と国で分けて負担するという設計になっているわけです。不透明な形で保険料に紛れ込んでいるのではありません。
そう分かると、モヤモヤは減りました。そのうえで、加入者として運営に注文をつける正当性はあるとも思っています。費用を負担している以上、分かりやすい説明を求めるのは当然のことです。
農家の実感
「よく分からないまま払う」のが一番よくないと思います。内訳を数字で確認する。それだけで納得感がまったく違います。
入ってみて分かった注意点
- 前年のうちに手続きが必要(個人は1月〜12月が保険期間)
- 青色申告が絶対条件。白色申告のままでは入れません
- 実績年数で補償限度が変わる。1年でも入れるが、長いほど手厚い
- 窓口はNOSAI。JAではありません。まずは電話一本でいい
- 親から引き継いだ方は、戸籍関係の書類が必要になることがある。取り寄せに時間がかかるので早めに
- 積立方式は掛け捨てではない。使わなければ繰り越される
- 積立金は自己負担25%。出した額の約4倍が積まれる
- 自治体が独自の助成をしていることがある。必ず市町村の農林課に確認する
- インターネット申請で事務費が割引される
まとめ
- 収入保険に加入した。加入してよかった
- 「最悪の年でもここまでは戻る」という線が引けると、経営の判断が落ち着く
- 青色申告が加入条件。1年分の実績でも加入できる(補償限度は75%)
- 窓口はNOSAI。まずは電話一本で書類が送られてくる
- 用意したのは申請様式・青色申告のコピー・相続人だと分かる書類(親から引き継いだ場合)
- 個人は前年12月までに申請。戸籍関係の取り寄せがあると時間がかかる
- 制度は複雑なので、行く前に自分で調べて、質問を紙に書いて持っていく
- 窓口は「教えてもらう場所」ではなく「自分の数字を確定させる場所」
- 私の場合、基準収入約200万円で保険料 約12,000円・積立金 約45,000円・事務費 約6,000円
- 掛け捨ては保険料と事務費だけ。年間およそ18,000円。積立金は自分のお金で繰り越される
- 積立金は自己負担25%。45,000円出すと補助と合わせて約18万円の備えになる
- 補償の上限は最大およそ160万円。年2万円弱の負担で、この備えが持てる
- ただしこの保険料は、市の助成(掛捨て部分の1/2)が入った後の金額です
- 自治体の上乗せ助成は全国一律ではありません。自分の市町村に必ず確認してください。負担が半分になることがあります
- 事務費は別建てで公表されている。加入者割 新規4,500円+補償金額割。ここにも補助がある
- インターネット申請・自動継続特約で事務費が割引される
ご注意
本記事は筆者の加入体験にもとづくものです。金額は個人が特定されないよう丸めています。制度の内容・補助率・保険料率・事務費は改正されることがあり、また補償内容は個々の経営状況によって変わります。加入の判断にあたっては、必ず農林水産省の公式情報およびお住まいの地域の農業共済組合(NOSAI)にご確認ください。