農ライフ

りんご農家の息子が、父のりんご園を8分の1に縮小した話

父が丹精込めて育てたりんご園は、24000平米ありました。

青森の冬を何十回も越えながら、剪定・摘果・防除・収穫——農業の技術を愚直に磨き続けた父が残してくれた園地です。

それを今、私は3000平米まで縮小しました。8分の1以下です。

伐採した木は、もう戻りません。譲渡した園地には、今も誰かのりんごが実っています。

この記事は、その決断までの経緯と、今の兼業農家としての現実を、ありのままに書いたものです。


父のりんご園:24000平米を守り続けた職人

父はりんご農家として、技術にこだわる人でした。

市場価格がどうであれ、収量がどうであれ、「いいりんごを作る」ことへの関心が常にありました。新しい剪定の方法を試したり、農薬の使い方を工夫したり、いいりんごができる枝を接いでみたり——農業を「仕事」というより「探求」として向き合っていた人です。

24000平米という面積は、青森のりんご農家としては中規模ですが、一人の人間が管理するには相当な労力がいる広さです。それを父は長年守り続けました。

ただ、りんごの市場価格がここまで上がったのは、この2年ほどのことです。

父は、金額的においしい時期を経験することなく、逝きました。

価格が上がる直前に亡くなった父のことを思うと、今も複雑な気持ちになります。報われてほしかった、と。


引き継いだはいいけれど:兼業農家の現実

私は現在、別に仕事を持ちながら農業をしています。いわゆる兼業農家です。

父が亡くなり、りんご園を引き継いだとき、正直なところ「どこまでやれるか」という不安がありました。

農業は、知識と体力と時間が必要な仕事です。本業がある状態で24000平米を管理するのは、現実的ではありませんでした。

農作業を手伝ってくれる方にお願いすることで、本業との両立はできています。ただ、人件費が発生するため、収益構造としては厳しくなります。

それでも最初のうちは、できる限り父の園地を守ろうとしていました。


縮小の決断:さみしさと向き合った時間

結論から言えば、縮小は「限界」ではなく「選択」でした。

ただ、その選択をするまでには、かなりの時間がかかりました。

伐採するということは、父が何十年もかけて育てた木を切るということです。樹齢を重ねたりんごの木は、簡単には育ちません。一度切れば、それまでです。

園地を譲渡するときも、同じ気持ちでした。

手放した土地に、今も誰かのりんごが実っているのを見るたびに、なんとも言えない感情があります。さみしさ、と言うしかない感覚です。

それでも決断したのは、「続けられる規模で、ちゃんと続ける」ことの方が、父への誠実さだと思ったからです。無理をして中途半端になるより、3000平米をきちんと管理する方がいい。そう自分に言い聞かせました。


今のりんご経営:売上200万円・手取り20〜30万円の現実

現在の経営規模をそのまま書きます。

りんごによる売上は、年間200万円を超える程度です。弘果(青森県弘前市場)への市場出荷が中心で、価格は相場に左右されます。

そこから人件費・農薬・肥料・農業資材・荷造運賃・農機具等の維持費などの経費を差し引くと、実質の手取りは20〜30万円という感覚です。

数字だけ見ると、少ないと感じる方もいると思います。私自身もそう感じます。

ただ、この収益の中には、数字に表れないものも含まれています。

  • 農作業をしてくれる方に、人件費として払えること。その方の生活の一部を支えられていること。
  • 自分で収穫したりんごを、家族や知人にプレゼントできること。
  • スーパーでは買えない、作り手の顔が見えるりんごを、自分で食べられること。

これがメインになっているようなところがある、と正直に思っています。


兼業農家としての確定申告

農業所得は「事業所得」として確定申告が必要です。売上から経費を差し引いた農業所得と、給与所得を合算して申告します。

私は青色申告を選択しており、帳簿管理にはマネーフォワード クラウド確定申告を使っています。農業の勘定科目は一般的な会計ソフトでは対応が薄いこともありますが、カスタマイズで対応できました。

詳しくはこちらの記事にまとめています。
農家の確定申告のやり方|りんご農家が実際にやってみた


それでも続ける理由

なぜ続けるのか、と聞かれたら、正直なところ「義務感」ではないと思います。

父が残してくれたものへの敬意、農業という仕事への関心、農村の中で生きることへの愛着——そういったものが積み重なって、「やめる理由が見当たらない」という感覚に近いかもしれません。

収益の最大化を目指すなら、もっと効率的な選択肢はあります。でも農業は、効率だけで測れない価値があると感じています。

3000平米のりんご園は、私にとっては父との接点であり、青森の土地との接点です。それをどう続けていくか、まだ模索しながらやっています。


まとめ

りんご農家の息子として、父の園地を引き継ぎ、縮小し、今も続けている——そのままを書きました。

農業の収入の現実(売上200万円・手取り20〜30万円)は、決して高いものではありません。ただ、農業を続ける理由は、お金だけではないとも思っています。

同じように、農業の継承や兼業農家としての経営に悩んでいる方に、少しでも参考になれば幸いです。

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